「静かな急変を見逃さない」
Kさん 3C病棟勤務
私が働く回復期リハビリテーション病棟では、急性期を脱した患者さまが再発や憎悪を予防しながら、各々の目標に向かいリハビリを頑張っておられます。
患者さまの多くは80歳以上の高齢の方が多く、原疾患以外に既往疾患をたくさん抱えておられるので高いアセスメント能力が必要です。
入職し半年が経ちますが配属当初は自分の能力の低さに苦しみ、ナースコールや面会者の対応で毎日疲れ果て、失敗と反省の繰り返しの中で私はこの壁を乗り越えることができるのかと自問自答する日々が続いていました。
そんな毎日を送っていましたが、心から嬉しかったのが80歳代女性Aさんとの関わりです。Aさんは凛とされた弱音を吐かない女性で、転入されてから症状の憎悪がありましたが、現在は車椅子で食事をとり、リハビリでは歩行訓練できるほど回復されていました。その日も朝の申し送りで発熱者やVS著変者なし、と報告を受けていたのでいつも通り朝の検温に回っていました。Aさんの病室の前で声をかけ入室すると、Aさんからは返答がなく閉眼したままでした。今日は眠たいのかと最初は思いましたが、よく観察すると眉間にしわを寄せ呼吸が少し苦しそうでした。すぐに検温し38.5℃だったので頭痛や咽頭痛がないか確認すると、閉眼したまま頭と両手が痛いと小さな声で教えてくださいました。ほかのVSに著変がないことも併せてすぐにリーダーに報告し、検査、治療が開始されました。
検査の結果、偽痛風の再燃であろうとの判断でした。私は頭部クーリングを行い、また昼食を一口も摂取されなかったので、水分摂取の為にできるだけAさんの病室を訪れました。感染症の疾患ではなかったのでリハビリが行われ、その時の様子を担当PTから聞いたり、先輩看護師からアドバイスをもらいながら今自分に出来ることを精一杯実施しました。内服の効果もあり少しずつ解熱し、16時過ぎには37℃台になり、トイレに行けるほどに回復されました。
ほっと胸をなでおろしてAさんの病室に行くと、Aさんは「早く気付いてくれてありがとう。」と笑顔を見せてくださったのです。その時のAさんの笑顔と嬉しい気持ちは一生忘れることはないと思います。
今回のAさんとの関わりの中で学んだことは、患者さまは静かに急変するということです。ナースコールで体の変化を伝える暇なく訪れる急変を一刻も早く発見することの大切さ。そして、医療はチームで行われるからこそ力を発揮することができるということです。今はまだ未熟ですが失敗と反省を繰り返しながら日々学習し、患者さまの笑顔を少しでも増やせるような看護師になれるように、Aさんの笑顔を励みにこれからも頑張りたいと思います。